病院から「今すぐ戻ってこい!」という連絡があった。
横になって休んでいた私の意識は一気に覚醒した。
スリッパ…パジャマ…
病院に戻る~お出迎え
「白血球が異常値になってます」と電話で言われ、それがどういうことなのか素人にはわからなかったけれど、電話口の医師の話し方からまずい状況であることはわかった。
パジャマとスリッパだけでいいものなのか・・
切迫した状況だけれど、他にもっていくものはあるか、実家に連絡しないと、と頭の中は割と落ち着いていた気がする。なにせ、散らかった部屋に身内が来てしまうという焦りも生まれていた。(普段から片付けなさい)
簡易的な旅行の準備、という感じで歯ブラシやらスキンケア関連、下着をいくつかつめこんで再び病院へ向かった。
診察室へ~手術の手続き
病院へ着くと、入口に看護師の女性がひとり、なんと車いすを携えて待っていた。
歩けないほどではないのにな、と思いながら、そうやって待っていたことで余計に自分の状況のまずさを実感する。
人生初の車いすに乗り、診察室へと向かう。
診療時間が終わった院内は、午前中のごった返した感じではなく、しんとしていた。
午前中に入った診察室へ再び入室。
診察してくれた男性医師に加え、女性医師がひとり待っていた。
まず、血液検査で白血球の値が異常である理由と、CTの検査結果により、緊急手術をが必要だと説明された。
白血球が異常値を示す理由としては、体の中で炎症が起きていると考えられる。十中八九、CTで確認した卵巣の腫れが原因だと思われる、と。
「このあとすぐ手術するよ!」
「身内の同意書が必要だよ!」
簡単に言えば、こういう説明をされた。
上京してひとり暮らしだったので、身内に同意をもらう必要があるといわれ、地元にいる父の電話番号と実家の電話番号を伝える。
あとから聞いた話、仕事中の父の携帯電話に知らぬ番号から電話が。不審に思いながらも電話に出ると、
「これから娘さんの手術を行うので同意を!」という内容。
新手の詐欺か!?と思い詳しく聞くと、私の住むエリアや詳細な情報が合致。金をよこせと言っているわけでもない、どうやら本当らしい??緊急を要するらしい、同意しますと伝えるしかなかった。本当に驚いたと。
驚かせて悪かったねぇ、と後々その話を聞いて謝った。
手術準備~手術室へ
前もって決まっている手術ではないため、色々なことがせわしなかった。
手術の概要に関して簡単に説明を受け、麻酔のリスクに対する同意書などにサインする。
手術着に着替え、術前の準備。
これがなかなか・・・当時の情弱な二十歳そこそこの娘には驚きが強かった。
婦人科の手術、下腹部を開腹・・ということは・・?
赤裸々に言えば、下の毛なくさないといけないということで・・・
若い女性看護師と処置室に入る。処置をしながらも緊張をほぐそうと世間話をしてくれる。
どうやら同い年。看護師してるなんて立派ですね!と感心しつつ、とにかく下腹部の激痛がつらくなってくる。
毛を剃られる経験もはじめてで、通常なら気が動転していたかもしれない。
けれど、その頃にはぶりかえした痛みにしかで意識が向いていなかった。
なにをしてもいいから、この痛みから一刻も早く解放してぇーーーーっ!!
しか頭に浮かばなくなっていた。とにかく痛い。いつも重い生理痛の100倍くらい痛い。
その前後の記憶がおぼろげではあるが、下の毛の処理が終わった後、ストレッチャーにのって手術室に移動したような気がする。
そして麻酔。局部麻酔。なぜ全身麻酔ではなかったのか。
麻酔が効いてからは意識が遠のいたが、途中覚醒することになる。
それが本当に、本当に今思い出しても苦しい時間のはじまりだった。